椅子の神様、Hans J Wegner の生み出した椅子たちの中には、所謂チェアの類以外に、こんなベンチもあるのです。
堅牢流麗なその姿は、一般に言うベンチという名詞に当てはめるには華やか過ぎて少し躊躇ってしまうほど。
「JH574」の名の通り、ウェグナーがJohannes Hansen社のためにデザイン、そして同工房が製作したこのベンチは、4人掛け、3人掛け、2人掛けの3種類があり、今回買付の叶ったのは 2人掛けの4本脚 、W1200タイプとなります。
全体が纏う無垢チーク材の堅牢さからくる重厚感は、スリット構造の座面が軽やかな印象へ変えてくれます。このスリットは自重の軽減や無垢材の反り、そしてベンチとしての安定性を叶えてくれ、ウェグナーの手がけた構造美が十二分に感じられます。
デザインを形づくる線や厚みの取り方、余白の扱いが実用性と視覚的調和の両面で高い完成度を実現している。知っている人しか知らないであろうこの家具もまた、紛れもなくウェグナーを代表する作品の一つでしょう。
そんなパーフェクトに近い感想を持つこのベンチの唯一、みんなが何故だろう、と思ってしまうポイントに、角脚形状の脚部を上げたい。上部に比べてどこか少し、ボテっとした印象を感じてしまいます。
Johannes Hansenなので、当然製作の最終仕上げは手作業。製作的に問題があったとは思えないし、バランスから見ても丸脚にした方がウェグナーっぽいのに、と感じます。
私ごときでそう思う、ということは、ウェグナーだって一度はそう思ったかもしれないし、であれば、この角脚には別に、こうあるべき理由というのがあるのでしょう。
W1200 D430 のサイズ感は2人掛けには十分。ただ高さが300mmは座るだけにしては少し低めです。
この次に製作された品番 JH575がコーヒーテーブルであることを鑑みるに、このJH574も、ソファ前のリビングテーブルや玄関・窓際などのローテーブルなど、低座レイアウトに最適なサイズに仕上げることで、座るだけではない多様な使い方を想像できるよう作られたのではないかと、自然に想いが巡ります。
先ほどの、なぜ角脚なのか、という点も、この座るだけでなくテーブルとしての構造性を混ぜ合わせた結果としての角脚、と思ってみると、この方がしっくりとくるし美麗だ。と、ウェグナー自身が思ったのかもしれませんね。
この角脚がただの四角柱をテーパーしたものでなく、三角錐に近い形状で長手を内側へ向けたことにもまた違った意味が見えてくる気がします。
きっと他の箇所にも巨匠のイメージが具現化されているのだと思いますが、もうこれ以上は私に上手な言語化はできませんので、
そう長くここにいてはくれないかもしれませんが、
ここまで読んで、この唯一無二なベンチが気になってしまった方は、この丁寧な仕事ぶりを感じにお店へお越しくださいませ。
現在、
haluta karuizawa instock showroom にて展示または保管中です。